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小説

大根で仕上げる

彼女は彼女のまま、彼女が思うように成長し、生活する。

 26歳独身の女性、北沢美枝子の物語です。彼女がかつて住んでいた家がどのような経緯で、今住んでいる集合住宅の一室になったのか、両親のこと、親友のこと、学生時代のアルバイトから今に続く喫茶店での仕事のこと。美枝子の「今」が、詳細に描かれていきます。それはまるで、過去や両親、幼少期の体験や育った環境は、彼女というひとりの人間を作り上げるのに、それほど大きな影響はなく、彼女は彼女のまま、彼女が思うように成長し、生活する、そのこと自体が物語となって語られ、読者は、その魅力的な彼女を存分に想像できる、そういう小説です。

底本:『恋愛は小説か』文藝春秋 二〇一二年
初出:「文學界」二〇一一年十月号

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