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小説

万能のティー・スプーン

彼と仲の良い女性が登場して、その二人の関係は原田と百合子の関係と微妙に接近します。その二重写しで、男女の関係を描き出す短編小説なのです。

 四十五歳の作家、原田浩二朗は、恋人の四十三歳の経済学者、田崎百合子と京都のホテルにいます。午後の時間をベッドで過ごしながら、二人は原田がこれから書く予定の短編小説に登場させる、大学を出たけれど就職できなかったひとりの青年について考えます。彼の容貌、学業の成績、境遇、生活、性格、二人の会話が進むにつれて、彼の輪郭がハッキリしてきて、同時に物語が動き始めます。彼と仲の良い女性が登場して、その二人の関係は原田と百合子の関係と微妙に接近します。その二重写しで、男女の関係を描き出す短編小説なのです。

底本:『木曜日を左に曲がる』左右社 二〇一一年

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