VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

小説

髪はいつもうしろに束ねる

物語は彼女の核心を掴む音楽を鳴り響かせて、その幕を閉じるのです。

 髪をいつも後ろで束ねている彼女、佐野真紀子をその髪型から容貌、身長、体つき、姿勢、服装、声、喋りと詳細に描写していくことに、そのほとんどが費やされた物語です。そして、そこから立ち上がる彼女を、周りはどう感じるのか、彼女自身はどう思っているのか、彼女の仕事、彼女の年齢、ついには彼女の住居に至るまで、片岡義男は克明に具体的に描写していきます。彼女と大家さんの関係が描かれて、そこに彼女が人とどう接するのか、彼女に恋人がいたらどう行動するのか。物語は彼女の核心を掴む音楽を鳴り響かせて、その幕を閉じるのです。

底本:『木曜日を左に曲がる』左右社 二〇一一年

このエントリーをはてなブックマークに追加