真珠湾をバックに『トラ・トラ・トラ』を観た夜
南海の島の、星の多い夜空にむかって、横長の四角形に、どことなく荒涼たるさびしい雰囲気をたたえて、スクリーンが建ててあった。やって来ている自動車の数は、見渡したところほぼ七分の入りだった。ぼくは、スクリーンにむかって右端の最後列に車をとめていた。車のなかには友人たちがいて、ぼくはその車の屋根のうえにあぐらをかいてすわっていた。この位置からだと、そのドライブ・イン映画場から、真珠湾がスクリーンのむこうに見えるのだった。ホノルルの、ドライブ・イン・シアターだ。
カラーの漫画短篇が二本あって、そのあとで、その夜の目玉商品の劇…
底本:『町からはじめて、旅へ』(「南海の楽園より」)晶文社 一九七六年初版、二〇一五年一月改版