十六歳の僕はどんな思いで毎日を過ごしていたのだろう。四十四年後のいまとなっては思い出すことはほとんどない。もう一回、人生を十六歳からやり直すかと問われれば「まっぴらです」と答えるだろうから、あまりいい思い出はなかったような気がする。毎日高校に通い、授業を受けて、昼休みになると学校の近くにある喫茶店でカレーを食べ、煙草を吸っていた記憶がある。放課後になると水泳部の練習でくたくたになり、家へ帰るとギターをいじり、ラジオの深夜放送を聴きながらノートをひろげ、勉強したような気になっていた日々だったと、おぼろげには記憶している。水泳部の先輩か…