VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

つもる話とふたり連れ

 待ち合わせの場所は、ホテルのバーだった。ずいぶん以前に何度かたてつづけに来たきり、この数年、一度も足を踏み入れるチャンスのなかったバーだ。
 バーは、ぼくが記憶しているとおりの雰囲気で、健在だった。あれから何年もたっているから、いささか古びてくたびれているかな、とぼくはふと思ったが、心配は無用だった。そのホテルのバーは、昔とまったくおなじだった。古びてくたびれたような印象は、どこにもなかった。
 待ち合わせの相手は、すでに来ていた。カウンターの奥まった席にひとりですわり、夕方の酒を飲んでいた。半年ぶりで会…

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