待ち合わせの場所は、ホテルのバーだった。ずいぶん以前に何度かたてつづけに来たきり、この数年、一度も足を踏み入れるチャンスのなかったバーだ。
バーは、ぼくが記憶しているとおりの雰囲気で、健在だった。あれから何年もたっているから、いささか古びてくたびれているかな、とぼくはふと思ったが、心配は無用だった。そのホテルのバーは、昔とまったくおなじだった。古びてくたびれたような印象は、どこにもなかった。
待ち合わせの相手は、すでに来ていた。カウンターの奥まった席にひとりですわり、夕方の酒を飲んでいた。半年ぶりで会…