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エッセイ

彼女と別れて銭湯のあと餃子

 小田急線の下北沢から新宿へ。新宿から山手線で池袋まで。そしてそこから赤羽線という電車に乗って十条へ。いつも僕は駅の西側へ出ていた。一九六〇年代なかばのことだ。その頃から現在までのあいだに、駅前がどれだけ変化したのか、僕には見当のつけようもない。ほぼ正面に十条銀座という商店街の入口が見えていたことは確かだ。駅を出てその入口まで、自分がいつもどんな経路をたどっていたかも、僕には思い出すことが出来ない。
 商店街の入口に向けて歩いていく僕から見て、入口のいちばん外の右側に、彼女はいつも立っていた。僕との待ち合わせの場所がそこ…

底本:『洋食屋から歩いて5分』東京書籍 2012年
初出:『Coyote』2005年6月

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