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書評

読まなくても本質に触れた気持ち

〈書評〉岸本佐知子、三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美著『「罪と罰」を読まない』

 ドストエフスキーの『罪と罰』と言えばつうじた時代がかつて日本にあった。いまではつうじないだろう。なんですかそれ、と訊かれてそれで終わりだ。たいていの人は作者名と題名は知っていて、世界文学全集にはかならず収録され、学生の頃に読んだけれどよく覚えていません、と答える人たちが少なくなかった。
 いまではそもそも知らない人が多いのだから読んだ人もごく少ない。知ってはいるけど読んではいない人が、じつは昔から多数派だった。そ…

底本:『週刊朝日』2016年3月18日号

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