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エッセイ

アイスクリームには謎がある

 アイスクリームについて思うと、その思いは過去へと向かっていく。僕がまだ充分に幼くて可愛い坊やだった頃、僕はいちばん最初のアイスクリームを食べたはずで、それについての記憶はいまも残っている。幼い体の口腔感覚がとらえた、アイスクリーム専用のスプーンの感触。これを思い出す。
 おおざっぱに言えば平たいが、微妙な曲面によってぜんたいの成り立っている、普通のスプーンのような楕円ではない、四角の角を丸く落としたようなかたちのスプーンだった。片手の指先に持って支えたときの、あのスプーンの柄の感触も、まだ僕の指に残っている。アイスクリ…

底本:『ピーナツ・バターで始める朝』東京書籍 2009年

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