VOYAGER

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評論・エッセイ

絶望のパートタイム・サーファー

 いまの日本の人たちほど不自然で無理な生きかたをしている人たちは、世界のどこにもいないと言っていい、という感想を僕は持っている。ここで僕が言ういまとはどのくらいの時間の幅なのか、僕が自分で体験した範囲内で言うなら、高度成長の急な登り坂の、下から3分の1ほどの位置に該当する時期から、こちら側だ。
 そのごく短い期間のなかで、日本の人たちがいかに基本を忘れた奇妙で不自然きわまりない生活をするようになったか、具体的な例をひとつだけあげておこう。それは雨だ。
 雨は、日本列島にとっては本当に恵みの雨であるのに、その…

底本:『昼月の幸福──エッセイ41篇に写真を添えて』晶文社 1995年

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