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エッセイ

西陽の当たる家

 僕は西陽の当たる家が好きだ。午後になったら自分の家は西陽を受けとめてほしい。そしていくつかの部屋には西陽が射しこんでほしい。これまで僕はいろんな場所でさまざまな家に住み、いくつもの部屋を自分の場所として使ってきた。しかし、どの家もどの部屋も、西陽とは縁がなかった。たいへん残念だ。日本の家屋はなぜか西陽を嫌っている。西はふさいである家が多い。
 西陽の当たる家を、僕は想像のなかに持っている。その想像を現実に変えることは可能だろうけれど、あまり現実的になるのは好きではないから、想像はいまだに想像のままだ。兎小屋以下の、たと…

底本:『アール・グレイから始まる日』角川文庫 1991年

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