それも姉が教えてくれた
姉について僕が最初に聞かされたのは、父親からだ。僕はそのとき九歳だった。「カリフォルニアから姉が来て、しばらく日本に滞在する」と、父親は言った。単に姉とだけ言ったところに、彼らしさが本当に彼らしくあらわれていることに、僕はとっくに気づいている。自分の姉だと僕には思わせておき、いよいよというときになって、きみの姉だよ、とこともなげに言って僕を驚かせようとしたのだ。驚かすことによって、姉の存在を一瞬のうちに、僕に認めさせることに彼は成功した。
彼には兄弟や姉妹が多かった。ハワイで生まれて少年時代までそこで過ごしたあと、彼…
底本:『日本訪問記──写真で作る小説』マガジンハウス 1992年
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