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エッセイ

それをマヨネーズ・ブックと称したい

 一九七二年の確か七月だったと思う。三十代の前半に入ったばかりの僕は、ホノルルのダウンタウンで定宿に滞在していた。南ベレタニアのそのあたりは、いつもは東京にいる僕にとって、一九五〇年代なかばから知っている、故郷のような場所だった。二十年前とほとんど変わらない様子のなかに、ほんの少しだけの変化があり、両者は均衡がとれていた。だから居心地はたいそう良かった。
 二十歳から文章の書き手になり、一九七二年には書き手としての経験を、すでに十年以上、持ってはいた。しかし書くことの内容は、十年間ほぼおなじだった。次の段階へ僕は出ていか…

底本:『文學界』2016年12月号

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