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評論・エッセイ

平和の記念写真

 このふたつの光景それぞれに、心惹かれるものがあった。だからこそ僕はそれらを写真に撮ったのだが、撮る行為は反射的なものだった。なぜ自分は心惹かれるのかについてはなにも考えないまま、現像の出来たフィルムは適当にファイルし、そのまま忘れてしまった。
 それから数年後のいま、そのフィルムをライト・テーブルに置いてルーペごしに観察すると、この光景こそ幸福というものではないか、と思う自分に出会うことになる。平和が当然のことのように続いているなかで、いつもとなんら変わることなく営まれる日常というルーティーンの、おそらく最小単位と言っ…

底本:『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』ちくま文庫 2003年

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