白い、半袖のシャツ
「あれから、十二年?」
と、彼女がきいた。
「たいしたこと、ないよ」
ぼくが、答えた。
「そうね。それほどの時間ではないわね」
十二年が経過しても、ぼくは昔のままだ。彼女も、変化のない部分はそのままだが、変化をきたした部分は、じつに爽快に大きく、美しい変化をきたしていた。あれから何年になろうが、そしてその結果として、いまのぼくたちがおたがいに何歳であろうと、いっこうにかまわない。しかし、経過していく時間は、変化をもたらす。彼女の身の上に起こった変化を、いまのぼ…
底本:片岡義男エッセイ・コレクション『「彼女」はグッド・デザイン』太田出版 1996年
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