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評論・エッセイ

東京の情緒

東京の情緒



 大卒で会社に入り、そのまま従来どおりの定年まで会社勤めをまっとうしたとして、人生七十年のほぼ半分を、その人はサラリーマンとして過ごすことになる。その場所がずっと東京だったら、ここにあるような光景は、自分と深く結びついて分かちがたく、定年を迎える頃には自分の一部分のように思えるまでに、なっているのではないか。
 毎日飽きるほど見てるんだ、なにをいまさら写真を見せられなくてはいけないんだ、という意見はあっていいけれど、なんらかの事情で不本意にも会社勤めを中断し…

底本:『ホームタウン東京──どこにもない故郷を探す』ちくま文庫 二〇〇三年

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