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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

なにも言わない人

 戦後の日本人にとって、人生とは会社に勤めることだったようだ。なんらかの会社組織に雇用されてそこに所属し、仕事をして給料をもらい、なおかつ生活のほぼ全領域を会社に依存させること、これが戦後の日本人の人生だった。どこからも文句は出ないという意味では、非常にしばしば、それは立派な人生でもあった。
 そして戦後の日本とは、規格製品を大量に生産して販売する経済活動であったことは、すでに誰にとっても明らかだ。日本に林立した会社群がそのような経済活動を直接に担い、国家は強力に会社群を保護した。日本株式会社と外国から言われ、自らもそう…

底本:『日本語で生きるとは』筑摩書房 1999年

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