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書評

髪や肌の色がちがえば、性的エネルギーのありかたも大きく異なってくる、という物語

『シンデレラ・リバティ』そして『さらば、冬のカモメ』という映画を記憶しているだろうか。どちらも、僕は楽しんで観た記憶がある。この二本の映画の原作小説を書いた、ダリル・ポニクサンの小説『アンマリッド・マン』を、僕は読んだ。タイトルを日本語で理解するなら、結婚しているという状態をくつがえした男、とでもなるだろうか。結婚をアンした男、だ。
 主人公の男性は、白人の中くらいよりすこしだけ上の階層に属する人として、ごく平均的な価値観を持った善良な男だ。彼には妻がいる。自立していない、したがって気持ちの不安定な、金髪の女性だ。ふたり…

底本:片岡義男エッセイ・コレクション『本を読む人』太田出版 1995年

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