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小説

あの少年の妹

描写のみで作られた小説に物語のようなものが立ち上がる。

一人の女性の、スーパーマーケットで買い物をして、地下鉄に乗らずに二駅を斜めにショートカットするように歩いて帰宅して、買ってきたものをキッチンに置いて、三年以上住んでいるのに間取りを覚えられない迷宮のような部屋で、正座したり、窓から見える公園の風景を楽しんだりして、大きな書棚がある部屋で古い写真へとたどり着く、その様子が克明に描写された小説です。その中で、東京という街を外からの視点で見る彼女を通して、街にも、部屋にも、彼女にもある欠落が見えてきます。無いものを描くための一つの方法が、ここにあります。

底本:『ミッチェル』新潮文庫 1992年

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