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小説

朝食を作るにあたって

物語を想像することで、主人公の悲しみと楽しみが重なって見える物語。

ある男が朝目覚めてから、朝食を作るまでのルーティーンについて書かれた物語です。ただ、そのルーティーンはたった一つのことで、そこに行き着くまで、彼は様々な想像を巡らすのでしょう。この小説は、毎日行われる想像のほんの一例を切り取ったものです。二回の結婚、離婚を経て一人暮らしの彼は、想像上の女性と会話します。想像が陳腐ならやり直し、スムーズに話が目的のルーティーンへと向かうように、会話を紡いでいきます。それは、物語作りであり、彼はそうやって毎朝物語を作って、一つの哀切な想いにたどり着くのです。

底本:『今日は口数がすくない』角川文庫 1988年
初出:「小説新潮」1987年12月号