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小説

いまそこにいる彼女

描写の的確さ、映像喚起力の強さ故に、正に『いまそこにいる彼女』が目の前に立ち上がってくるようで、だからこそラストシーンが沁み入ります。

 女優からテレビタレント、そして作家になった中野玲子と、彼女が三十一歳で、その年の年間最優秀短編賞を受賞した、その同じ年に四十三歳で同じ賞を受賞した藤井祐介は、その授賞式で知り合い、それ以来、男女の仲になっています。その二人の一日、彼女の家に向かう藤井が、玲子に駅でばったりと出会ってから、次の日の朝までの彼女の様子が、藤井の視線で克明に描かれる短編小説です。その描写の的確さ、映像喚起力の強さ故に、正に『いまそこにいる彼女』が目の前に立ち上がってくるようで、だからこそラストシーンが沁み入ります。

初出・底本:『階段を駆け上がる 片岡義男短編小説集』左右社 二〇一〇年

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