街へ出て 本に描かれた東京の日常
六月初めの平日、雨模様の午後、所用が思ったより早く終わったので、さて、どうしようかと思ったら、閃いた。いつもの私鉄の各駅停車に乗り、一年に三度くらいしか降りることのない駅で降り、商店街をなんの用もなく歩いてみた。
高校生だった頃、電車で学校へいくときにはこの駅で降り、北へのびる商店街をバスあるいは徒歩で抜けると、やがて学校にたどり着いた。だからこの商店街には、土地勘やなじみがまったくないわけではない。うろ覚えだけがごくかすかに残る街を、雨の日にひとり傘をさして歩いていると、例によってコーヒーを飲みたくなった。
『THE NIKKEI MAGAZINE』No.86 二〇一〇年六月二十日
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