VOYAGER

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小説

麦畑に放りだされて

広大な麦畑の経験は、青年を濾過する。

はるかカナダにまで続く、気の遠くなるような面積の麦畑。
熟練の腕を持つ指揮官の下、麦刈り隊に加わった青年は
恐怖すら感じさせる、そして官能のゆらめきをたたえた
麦畑の法外な物量の中で、かつてない身体の開放と
地球と自分の体が一つになった感覚を獲得する。
麦畑と一緒に在ると、風はひときわよく目で観察することができ、
火はあまりに獰猛で俊敏に動く。
そこにむきだしの、プリミティヴな人間の動きが接する。
この純度の高さこそが、労働というものだ。