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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

架空の人、現実の人

 僕がまだ子供だった頃、たとえば七歳から十歳、あるいはせいぜい十二歳くらいまでの期間のなかから、僕が記憶している範囲内で架空の人をひとり、そして現実の人をひとり、選び出してみると面白いのではないか、とふと思った。面白いのではないかとは、そのふたりの人をとおして、なにかが見えるのではないか、というようなことだ。なにが見えるつもりなのか、なにを見たいのか、当てはいっさいない。
 架空の人も現実の人も、日本人あるいは日本のなかだからこそ成立し得た人を、選びたいと思う。架空の人は小説あるいは映画のなかにいるはずだ。日本の映画を、ご…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 二〇〇〇年

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