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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

情景の手帖 雨と風の設計図 4

 締切りは二週間あとに迫っていた。二週間あればなんとかなる、と思わなくもないけれど、二週間あっても撮れなければどうにもならない。依頼を受けたのはひと月ほど前のことだ。それからほとんど毎日のようにその写真のことを考えているのだが、まだアイディアはなにもきまってはいない。考えが浮かばないのではなく、考える状態に入っていけないのだ。なにがいけないのか。写真のアイディアよりもこちらのほうが、この数日の彼女には気になっていた。
 受けた依頼は、ひと言で済んでしまう簡単なものだった。「ビールを飲むときの爽快なうまさと幸福感。会社で九…

『キャシー・マム』二〇〇四年夏号

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