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評論・エッセイ

先見日記 「今日の平和と繁栄」と「不戦の誓い」

 終戦記念日の日本で首相が式典の会場で読み上げる式辞のなかには、ポイントが常にふたつある。2004年の記念日に首相が読んだ式辞のなかでも、そのふたつのポイントがちゃんと用意されていた。ひとつは、「今日の平和と繁栄は戦争で心ならずも命を落とした方々の尊い犠牲」の上に立つものであるとする部分。そしてもうひとつは、「悲惨な戦争の教訓を風化させることなく、不戦の誓いを堅持し」という部分だ。
 式辞はそのぜんたいにわたって、空疎な言葉の見本帳の様相を呈して久しい。首相だけではなく誰もが、おなじような言葉を述べるだろう。こうとしか言…

『先見日記』二〇〇四年八月十七日