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評論・エッセイ

先見日記 この自分と本当の自分

 両親のあいだに生まれた、ほかの誰でもないこの自分という人は、否定することが出来ない。したところで意味はない。この世におそらくふたりといない、したがってひとりだけの、極限的に個別的な、ひとまずは身体性としての自分だ。
 いまここにいるこの自分を、自分そのものとして、すべて納得して全面的に引き受けていけるようになるためには、どう考えても他者という種類の存在が不可欠だ。自分とはなにからなにまで異なる、その意味では超越的な他者でないといけないが、だからと言ってたとえば、神のような存在である必要はまったくない。男性の場合ならひと…

『先見日記』二〇〇四年一月二十日