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評論・エッセイ

先見日記 「きみは知らないだけだよ」

 12歳の僕が瀬戸内から東京へ戻ってきてほどなく、夏の終わりの季節、晴れた日の午後、下北沢から井の頭線で吉祥寺へ。そしてそこから中央線で立川へと、僕は電車を乗り継いだ。立川の米軍基地へいくのはこのときが初めてだった。そこで軍人として働いている日系2世の人のオフィスを僕は訪ねた。初対面のその人のところへいき、そこでおなじく初対面の別の2世の人に引き合わされて挨拶をする、というような用事だった。
 なぜそんなことをする必要があったのかは思い出せない。そうしろと言われて、そのとおりにしただけだ。出会ったふたりの2世たちの名前も…

『先見日記』二〇〇三年十月十四日