先見日記 真実の時間のなかを歩く
人生とは時間だ。生命として母体に宿ったその瞬間から、人生の時間は始まる。そしてその生命がひとまず終わるまで、その時間は続いていく。いったん始まったなら、一定の速度でどこまでも続いていき、かたときも休むことのない、もちろん一時的に止めることも不可能な、万人に等しく共通の、過酷にして非情な性質の時間、それが人生の時間だ。
刻一刻と経過していく人生の時間は、経過してしまったが最後、取り返しはつかない。ついさきほど、たったいまの時間ですら、もはやどこにもない。次の時間がそこに来てしまっている。そしてそこへ来たばかりの時間は、…
『先見日記』二〇〇三年十月七日
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