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評論・エッセイ

先見日記 荒野を歩いた午後

 2年前のちょうどいま頃の季節だった。山手線・高田馬場駅から早稲田大学に向けて、そして大学の周辺を、僕は歩いた。よく晴れた日だった。月刊雑誌に東京の写真を連載していて、その確か最終回の写真を撮るためだ。
 僕がこの大学を卒業したのは東京オリンピックの年だったと思う。それから現在までのあいだに、大学へは二度しか行っていない。一度めは10年ほど前で、はじけたばかりのバブルの余韻が、まだ東京をひたしていた。
 駅から大学までのあの道は通学路であり、学生だった4年間、僕はそこを何度も歩いた。喫茶店に入ったり古書店に…

『先見日記』二〇〇三年三月四日

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