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評論・エッセイ

先見日記 契約に違反し続ける国家

 契約、という漢字ふたつによる言葉を見て、人はなにを連想するのだろうか。ごく平凡な、現実のどこにでもある、どちらかと言うなら退屈そうな言葉だ。契約書を作成して捺印し合い、取り交わしておじぎして、どうぞよろしく、いやこちらこそ、といった光景が頭のなかに浮かんで消えるのか。
 日本のなかで、あるいはかならずしもなかではなくてもいいのだが、日本人として生きるなら、庶民のひとりとしていかに平凡な毎日を送っていようとも、その日々はじつは契約なのだ。そしてこれを越えるほどに大きな、しかも重大な内容を持った契約は、どんなに平凡ではない…

『先見日記』二〇〇二年十月二十二日