VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

そしてその他の物語 第31回

 銀紙の記憶、というフレーズを僕は思いついた。ボールペンでメモ用紙に書いてみた。見た目の印象は思いのほか地味だ。詩集のタイトルにいいかもしれない。短編小説の題名にも、そして短いエッセイの題名にも、使える。いま僕が書いているこの文章にタイトルをつけるなら、銀紙の記憶、となるかもしれない。
 銀紙の記憶、というフレーズの意味は、字面どおり、銀紙にまつわる記憶だ。銀紙の記憶がこの自分にあるだろうか、と僕は考えてみる。ある、と言っていい。
 幼い子供は小学校に入ると世界が社会に向けて急激に広がる。それまではまったく…

『Free & Easy』二〇一三年二月号

このエントリーをはてなブックマークに追加