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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

そしてその他の物語 第26回

 エドワード・ホッパーの絵が七点、三枚ずつのセットだったと思う。合計二十一枚のポストカードに封筒がおなじ数だけつき、それがホッパーの絵を巧みにあしらったボール紙の箱に入っていた。エドワード・ホッパーのポストカード・セットだ。買ったのはバブルの頃の東京でだったと思う。なにしろ時はバブルだから、東京でもそのようなものを雑貨店で買うことが出来た。
 そしてそれっきり忘れたまま、つまり一枚も使わないまま、時間は経過していった。ホッパーの絵の箱が目につくたびに、これをなんとかしたい、と思ったのだが、切手を貼って宛て名を書き、季節の…

『Free & Easy』二〇一二年九月号