そら、そこに空がある 晴れた日曜日の午後遅く
小さな丸いテーブルにむかって、僕と彼女は隣りあわせにすわっていた。彼女のまえに、僕は小型のライト・ボックスを置いた。スイッチをオンにした。箱のなかにあるいくつかの豆球が点灯し、ライト・ボックスの表面は明るくなった。
そこへ、僕は、一枚のカラー・スライドを載せた。彼女に、そのスライドを見てもらった。
「空なのね」
と、彼女は言った。
「午後遅く、まだ明るいけれど、すこしずつ夕方になっていきつつある時間の、いい空だわ。一日じゅう、きれいに晴れていた日なのね。秋のはじめの季節かし…
『トランヴェール』一九八九年十二月号
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