VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

片岡義男の食物誌 ぼくは、ビンやカンや袋に入った食べ物が大好き。

 子供のころ、相当にながい期間にわたって、ぼくにとっての主たる食べ物は、ビン詰、カン詰、袋詰の、いずれかであった。野菜ですら、たとえばホウレン草のカン詰のように、カン入りだったのだ。スープは、いまではすこしも珍しくないが、キューブにかためたやつとかチキン・ヌードル・スープのような不思議な粉末プラス固型物の袋入り、あるいは、キャンベルのトマト・スープみたいにカンに入っていて、カンをあけてナベに出すと、カンのかたちの円筒形になったブヨブヨのものが出てくるのだった。適当に水に溶き、あたためるのだ。
 こういったビン詰、カン詰、袋…

『Mr. Action!』一九七九年三月号