東京縦画面 シモキタ近影
きれいな晴天の日がひと月のうちに十日はあるとするなら、そのうちの半分の五日は、僕は外にいる。写真を撮り歩いているからだ。写真機だけを持った僕ひとり、という小さな単位にとって、東京はたいへんに広い。絨毯爆撃はとても不可能だから、今日はこのあたりを撮る、と見当をつけた場所へ出向き、陽が落ちるまでその一帯をさまざまに歩き、三十六枚撮りのフィルムで十本は撮る。撮った写真をどうするあてもないのだが、ときたま本を編んだり、この二ページの連載に成果を発表したりすることは、なんとか出来ているし、それで充分だろう。ある日あるとき、東京のとんでもないと…
『Free & Easy』二〇〇三年十二月号
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