東京縦画面 誤謬のディテール
個性や自分らしさなどは、自分はこれではなくあれを買ったという程度の、あるかないかの差異にもとづく形而下の出来事でしかない。そんな自分をはるかに越えた価値、つまり普遍性という形而上の出来事への加担こそ最大の生きがいであるはずなのに、そこからは思いっきり遠いところにいるひとりひとりの自分という種類の人が持つ最大の特徴は、自分の内部で考えられることしか考えない、すなわちなにひとつ正しくは考えられないということだ。そうした正しくない日々が作り出したすべての景色は、我勝ちに主張される自分とその都合、というディテールの集積によっている。普遍性と…
『Free & Easy』二〇〇二年八月号
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