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評論・エッセイ

アメリカン・マッスル 素足のビューティー

 水着美人、と日本語で書くと、歳時記のなかにある夏の季語のようだ。字面にやや古風なものが漂う。のどかな雰囲気も感じる。看板に偽りはない、という誠実さのようなもので、裏打ちされているようにも思える。戦後の言葉だろうとは思うけれど、最初に文字となって人々の目に触れたのは、大正デモクラシーの時代だったかもしれない。清楚な華やぎ、といったものも感じる。日本のどこに水着美人がいたのだろう。どこにもいなかった幻だからこそ、いまでもまるで季語のように、日本語の語彙集のなかにひっそりと静かにしているのか。
 ベイジング・ビューティーという…

『Free & Easy』二〇〇四年八月号

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