片岡義男のぼくのお気に入り道具たち ピンホール・カメラで全く別世界の風景をのぞいてみた
子供のころキットを買って来て自作したピンホール・カメラのことを、ぼくはいまでもときどき思い出す。
ようするに箱をひとつつくればそれでいいのだから、つくるのはたいへんに簡単だった。内側を黒く塗った板を接着剤でとめて箱をつくり、前面にはピンホールのあるブリキ製のシャッター・アセンブリーをとりつけ、うしろには、すりガラスの板をはりつけた。あっけないほどすぐに出来てしまったそのピンホール・カメラを部屋の外に持って出て、ピンホールがすりガラスのうえにつくる倒立した映像をはじめて見たときには、きわめて強い感銘があった。この感銘と…
『BE-PAL』一九八五年六月号