片岡義男のぼくのお気に入り道具たち いつまでも手元に置くものは、余計な主張がないのがいい…
なんの変哲もない白いコーヒー・カップとその受け皿を、かねてよりぼくはさがしている。熱心にさがしているわけではなく、ときたま思い出し、どこかにいいのはないかなあ、と思ったりする程度だ。しかし、なんの変哲もない白いコーヒー・カップとその受け皿、というものには、かなり執着している。
日本製のものがときどき目にとまるけれど、まずろくなものはないと断言してよい。ほらごらんください、白い器ですよ、さりげなく洒落てる人はこういうのを使うのよ、といろんなディテールが口をとがらせて言っているような、稚拙なうっとうしさに満ちたものが多い…
『BE-PAL』一九八五年四月号