片岡義男のぼくのお気に入り道具たち 自分の好きなナイフを見たり持ったりすると、そのたびになぜだか、なつかしくなる…
ぼくが持っているナイフのうち、ならべて写真に撮って、なんとかさまになるものだけを一堂に集めると、こうなる。ごく平凡な、普及品ばかりだ。コレクションには興味がないし、芸術品のような高価なナイフにも気持は動かないので、実用に徹したこのような普通のナイフばかりなのだ。
こんなナイフを見たり持ったりすると、そのたびに、なつかしい気持がおこってくる。なにを思い出してなつかしいのかよくわからないが、実用に徹したナイフという、人間にとって根源的な道具を自分の手のなかに持つと、やはりなつかしい。
子供…
『BE-PAL』一九八三年一月号