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評論・エッセイ

雨の歌を探す

 雨の日の午後に喫茶店で待ち合わせた人が、一杯のコーヒーのあいまに、
「雨の歌は日本にいつ頃からあるのかしら」
 と僕に訊ねた。
 昔からあるだろう、と僕は思った。しかし、漠然と昔と言っていては、なにごとも始まらない。
「大正時代にはあるよ」
 と僕は答え、
「子供の歌として」
 と、つけ加えた。
 子供に向けた歌の素材として、雨を採り上げて見事な詞をつけた詩人は、大正時代にはいたはずだ、と僕は思った。確かな根拠はなにもなかった。なんとなく…

『酒林』90号 二〇一五年九月

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