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評論・エッセイ

三十年ぶりの歯痛

 歯が痛くなった。結論をまず書いておくと、虫歯だ。これまで虫歯は一本もなかったのだが。下顎の左右、いちばん奥に親不知がひどく斜めに生えていて、どちらもそのすぐ前の奥歯にきっちりと接している。その接している下に空間があり、ここは上から歯ブラシが届かないため、汚れほうだいで歯垢のつくままだった。左右の親不知は斜めにがんばっている。それを側面に受けている奥歯、特に左のそれが虫歯となり、痛む状態にまで進んでいた。
 ただそれだけのことだ。痛みはさほどでもない。痛み止めの錠剤を人にもらって服用すると、痛みは噓のように消え去り、安眠が…

『酒林』65号 二〇〇三年一月

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