タイプライターを買った。今回は手動のものだ。手動のタイプライターを買うのは久しぶりだ。長いあいだ電動を使ってきた。一九六〇年代の後半に買った、スミス・コロナの手動タイプライター以来だから、久しぶりとは三十数年ぶりだということになる。
オリヴェッティのレッテラ35という機種だ。小さくすっきりまとまった、なかなか好ましいデザインだ。手動のタイプライターは、小さくても重さはずしりと両手にくる。この感触はたいそう懐かしい。手動のポータブル・タイプライターは、絶滅寸前種だと言っていい。いまでも作っているのはこのオリヴェッティだけ…
『酒林』60号 二〇〇〇年十月