雨の日に外へ出ていくと、自分がいつもの自分ではないような気がする。雨の日と晴れの日とでは、歩きなれて勝手を知った町でも、手ざわりはまるでちがってしまっている。それに、よく考えてみると、雨はこわい。空から水が降ってくるのだ! その水のなかに、傘をさして自分がいる。
雨の日と……
よく知っている好きな町のなかを歩いても、自分が周囲とぴったり嚙み合っていないような気がしてくる。どこがどう食いちがっているのか、はっきり指摘できるわけではないのだが、雨の日の町とそのなかにいる自分との波長の…
『別冊FMfan』第6号 一九七五年七月十日