VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

散歩して迷子になる 34 主人公とはいったい何者なのか

 僕がいつから小説を書き始めたのか、はっきりした起点を見つけるのは、自分自身にとっては難しい。いつとも言いがたい、いつの日からか、書き始めたとしか、言いようがないからだ。しかし便宜的な、したがって多くの人にわかりやすい起点を見つけてそこから起算すると、小説を書き始めて三十五年ちょっと、という時間が経過している。小説以外の文章まで範囲を広げると、それだけの時間にさらに十二、三年が加わる。
 文章を報酬のともなう仕事として書き始めてから半世紀近くになるわけだが、別にどうと言うこともないだろう。これくらいの人はたくさんいる。自分…

『図書』二〇一一年一月号

このエントリーをはてなブックマークに追加