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評論・エッセイ

散歩して迷子になる 28 僕はいつから「自分」になったのか

 二十代の始めから三十代の始めにかけての自分をめぐって、現在の僕が書いていく作業が、この連載としてすでに何度か回を重ねている。それ以前には、ペイパーバックを買い集めていた大学生の頃、あるいは少年の頃についても、かなり文字数を使って書いたはずだ。少年の最前期とも言うべき、物心のついた四歳、五歳、六歳といった年齢の頃の自分についても、必要にして最小限のことはすでに書いた。
 もっと前まで、つまり生まれたばかりの赤子の頃、さらには生まれる以前の、まだ影もかたちもないけれど、運命のようなかたちではすでに存在していた自分までさかのぼ…

『図書』二〇一〇年七月号

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