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評論・エッセイ

散歩して迷子になる 27 言葉で僕はなにをしたいのか

 大学を卒業して自動的に就職した会社を三か月で辞めたことに関して、自分には適性がなかったからだ、と僕は書いた。適性とは、なにだろうか。意味するところの、ずいぶんと広い言葉ではないか。その広さのなかに、僕が自分に関して言う適性の、僕に出来る限りでいいから厳密な意味を、見つけておかなくてはいけないはずだ。
 就職したその会社の仕事では、自分のごく一部分を使っているだけだ、と僕は感じた。それがどの程度のものであれ、そのときの自分のほとんどありったけを注ぎ込める仕事をしたい、と僕は願った。自分のごく一部分だけを使う仕事に適性はなく…

『図書』二〇一〇年六月号

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