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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

散歩して迷子になる 5 きみも遠からず書き手のひとりだよ

 中学生そして高校生だった頃の自分が読んだペイパーバックがどれだけ手もとに残っているか、いまの自分が持っているペイパーバックの山のなかに探してみた。短編集が三冊、見つかった。どれもみなポケット・ブックスという叢書のものだ。なにか読もうと思うとき、出版社別に選び分けて壁に寄せて積んであるペイパーバックを眺め渡し、なんとなく習慣のように、ポケット・ブックスの列の前に立っていた少年の自分が、体感という種類の記憶の底に、ごく淡く残っている。そしてその少年は、ひと頃は短編集ばかり読んでいた。
 一編ずつすぐに読めてしまうから、癖のよ…

『図書』二〇〇八年八月号

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