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評論・エッセイ

散歩して迷子になる 4 一九五五年二月二十三日、『地上より永遠に』

 よく書けた一編の小説を読んだ僕は、深いさまざまな感銘や強いひとつの感動を、生まれて初めての体験として受けとめた。この感銘や感動は、いったいなになのか。その小説を書いた人については問題にしないことにするなら、それを読んだ僕の手もとにあるのは、表紙のない一冊のペイパーバックだけだった。
 すでに書いたとおり、ペイパーバックという性質の本は、何枚もの紙をページとしてごく簡単に一冊に綴じ合わせ、厚いとも薄いとも言えない絶妙な感触のボール紙の表紙を貼りつけたものだ。どのページにも言葉が印刷してあり、その言葉は最初の一語から最後の一…

『図書』二〇〇八年七月号

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